障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2017年11月359号巻頭文

「一緒に育つ」を求めて

千葉市地域で生きる会 代表  高村リュウ

当会は、障害のある子もない子も一緒に地域で育ち、学び、生きていくことを願って千葉市を中心に21年前から活動している市民団体です。

会の発足当初から小中高校の普通学級を希望する子供と親を応援する活動と同様に、就学前である保育所、幼稚園や学童保育所の問題にも力を入れて取り組んできました。差別されることなく豊かな子供時代を過ごせることはとても大事ですし、一緒に育つことが一緒に学ぶことにつながっていきます。保育所を中心に当会の取り組みを紹介させていただきます。


【保育・これまでの千葉市の取り組み】

千葉市では会が活動を始めた当時は、保育所障害児枠を利用できるのは「障害中程度まで」で、3歳で歩けない子、握ったものを離せない子などは入れないという基準表があり、肢体不自由児や重度障害児は入所を断られている状況でした。

入所できない子の親は仕事を諦めて在宅で育てるか障害児の母子通園施設に通うか、親が働こうとすれば障害児入所施設という選択しかないという状況でした。区役所に保育所入所の申し込み行く一人親家庭の方に同行した時に「お母さん、お子さんに今必要なのは療育です。みなさん仕事を辞めて子供のために頑張っていますよ。どうしても働きたかったらこどもは施設に入れたら良い」と窓口で言われたことを今でもはっきり覚えています。

重度児の入所、それは当事者も多く、差し迫った問題でした。また、障害児の入れる保育所は決められていました(指定保育所)。このため兄弟姉妹が別々の保育所に入れられたり、入所中に障害児であることがわかった場合は指定園に転園させられて(追い出されて)いました。延長保育も障害児の親は認められていないため、遠方に職場のある親は仕事を続けることができませんでした。

この状況の中で私たちが最初にしたことは「母親の声を聞いてもらおう」と当事者、市会議員に呼びかけての意見交換会でした。会報も保育だけで別に作りました。次に市役所保育課の方を招いて「千葉市の保育制度」について教えてもらう勉強会を行いました。その後要望書を出して当事者と一緒に交渉を始めました。大勢の親が子供を連れて交渉に参加し、保育課で何度も交渉を行いました。「私だって働きたい」「人並みの生活をしたい」「我が子に子供らしい普通の生活をさせたい」など切実な思いをぶつけていきました。この結果1998年には重度児の入所が実現(市は必要な子には保育士1対1配置を行う)し、その後、数年かかりましたが、延長保育を障害児の親も利用できるようになり、全ての保育所・園に入所可能になりました。障害児は親が働いていなくても入所できるよう要望してきましたがこれはまだ実現していません。

【現在の取り組み】

・ より多くの当事者と出会うため「就学相談会」を「就園・就学相談会」と名称変更 相談会は新聞への予告記事掲載。全戸配布のフリーペーパーに無料の案内記事を掲載(宣伝効果大)。障害児の親の会でメール配信してもらう(宣伝効果大)。このことで就学前の方との出会いが増え、要望を伺う中で、保育要望書として会が連名して行政交渉の応援をする機会がこれまでより増えたように思います。

・ 市の担当者との制度の勉強会を開催 行政との勉強会は当事者の声を届ける機会になり、直接施策に反映されます。特に子ども子育て支援新制度への移行時期には何度も行いました。

・ 制度上の差別解消の要望書を提出 現在市の幼保運営課と話し合い継続中です。(会報の読者、障害児の親の会、などに参加を呼びかけて毎回赤ちゃんを連れた親子が参加してくださっています。)要望内容は、1保育所に障害児は6名までという人数制限の撤廃、集団保育可能という言葉の撤廃、障害児の入所を拒むことができる「千葉市障害児等保育審査指導委員会設置条例」の撤廃、医療的ケアの実現などです。この結果医療的ケア児への看護師配置は実現し、人数制限は撤廃する、条例は変える、との回答を得ているところです。

・ 保育に関する詳細情報を会報に掲載 毎年市から情報提供で、障害児の人数や3対1を超えて加配されている保育士の数などの詳しい情報をもらっています。この活動は、読者に情報を届けると同時に市 の保育行政を監視する役割も果たしています。

・ 県、国の調査を開示請求し資料として会報に掲載 調査名:「延長保育等の実施状況調査(国)「私立幼稚園特別支援教育経費補助金交付申請書(県)」「放課後児童健全育成事業の実施状況」など。情報を持っていることで、相談者に情報提供ができ、行政交渉にも使えています。

・ 会報での広報活動 保育所・幼稚園・学童保育所に通っている子どもの親の手記や各種調査結果を掲載。会報は療育機関・子ども病院・保健センター・保育所・幼稚園・市の担当課・教育委員会・マスコ ミ各社などに配布し、強力な武器となっています。

・ 公開質問状の実施 選挙時は公開質問状で保育所・幼稚園問題についても毎回質問し、会報、WEB上で公開しています。


他に、幼稚園関係では、数年かかりましたが、障害児のいる私立幼稚園名を県に開示させました。学童保育所は、1997年の児童福祉法改正時に市の障害児排除の文言を削除させた、当時3年生までだった対象児童を障害のある子は6年生まで利用できるようにさせた、学校と学童保育所が離れているなど移動に介助が必要な子どもには指導員が迎えに行くようにさせた、など多くの当事者と一緒に要望書を出して行政交渉を繰り返して実現させてきました。


千葉県には、保育所も幼稚園も学童保育所も制度上の障害者差別が残ったままの厳しい地域がたくさんあります。一緒のところの門が狭ければ、療育にごっそりと子供達がさらわれていきます。

活動する中で、行政にしっかり声を上げれば変わる時代になっていることを感じています。私たちはこれからも当事者と一緒に粘り強く声をあげていきたいと思います。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

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