障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2016年2・3月342号巻頭文

2016年度の運動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会  運営委員会

2015年度の活動を振り返って

全国連絡会は何をすべきなのか、あらためて全国連絡会の役割を考えてみます。明らかなのは、全国連絡会は中央組織と地方組織とか、上部組織と下部組織という関係におかれた中央組織でも、上部組織でもない、つまり、「地方」あるいは「下部」に活動を指示したり、させたりしていく組織ではないということです。しかし、全国連絡会は全国各地の活動する団体や個人をつないでいる会であり、それはある意味そのつながりの中心にあるということでもあります。つながりの中に情報を伝え、活動を呼びかけ、また相談にのり、必要な場合には広範な呼びかけによって支援にも取り組みます。また、つながりの力を集めて運動をすすめていく役割も期待されています。そして同時に、会は会員の会費によって支えられ、会は各地の会や会員の活動や支援によってて支えられています。そのように支え合う会となっていることこそが一番大きな役割なのかもしれません。そして組織としては、そういう役割が機能していくように運営がされていく必要があります。

活動の経過をあらためてみると、活動を継続的に支えていくべき会報は予定した年間10号を会の活動に沿いながら発行することができました。会報では各地のあるいはその時の問題を伝えてもきました。文科省に対してとかの中央で、また各地での課題への取り組みも呼びかけ、一定の取り組みもしてきました。そして日常的には、そうした活動を可能とするための会の事務所を、多くとは言えない運営委員や会員有志のボランティアの当番によって運営することができました。また、まさに日常的に保護者の相談を受けたり、情報を作成し伝えたり、活動を打ち合わせたりといった活動が行われてきました。これまで35年間続いてきた全国連の運動は一定の役割を果たしてきており、こうして活動を引き続きやってこれてよかったと思います。

しかし、こうして一定の活動をやってくることはできましたが、全国連の役割が十分に機能していたかというと、実際的には不十分になってきているのではないかという気がします。運動をさらに広め展開していくことができたか、そもそも運動を必要とする実態をよくすることができたか、全国連絡会として活動をすすめていく実際は、運動をすすめる人的な体制などいろいろな課題に迫られています。今後会は何をどのようにしていけるのか、ここ数年そしてこの一年間の活動の総括から、そのすすめ方を考えていく必要があります。

① 相談・支援の活動

電話やメールなど、日常の相談には担当を決めて対応してこれましたが、担当に頼っている状態でもあり、相談を受けて対応していくことを運動としてさらにすすめていけたらと思います。

全国一斉障害児の普通学級就学相談ホットラインを6月と10月の2回実施しました。行政の早期の健診や相談体制がすすめられている中で、「分離」はおかしいと保護者には気づきにくくされています。むしろ、分けらることが当たり前のような雰囲気になってさえいるかのようです。そのような中でホットラインには、あまり電話はかかってこないのですが、それでも全国各地でそれなりの相談が寄せられます。そして、厳しい状況の中でも、おかしいと感じている方たちには、相談は大きな支援になっていきます。方法を工夫しながら取り組んでいく必要があります。

② インクルーシブ教育実現と制度改革の取り組み

差別解消法の施行も迫る中で、付き添いの強制をさせない取り組みが一層課題となっています。3月の総会、世話人会の開催に合わせて文科省との交渉を行いました。なかなか有効な返答はとれませんが、現状の問題を追及したり具体的な要求をしていくことも大事だと思っています。一方で、付き添いの強制をさせないように求める運動キャンペーンとも協調して取り組んでいます。

さらに、差別解消法施行にともない策定される省庁のガイドラインに、私たちの要求をつきつけていくパブリックコメントへの取り組みを呼びかけました。こうした声をあげていくことも意味があります。今後実施されてからも、具体的になされるべき合理的配慮を求めたり、何より差別を許さない取り組みをしていく必要があります。

そうした中で「多様な教育の機会確保法」を企図する動きがあります。不登校・フリースクール、夜間中学といった問題に対応しようとするものとはいえ、子どもたちの学びの場をさらに分けるものであり、インクルーシブ教育に反するとして問題化してきました。今後の具体的な動きを注視し対応していく必要があります。

また、茨城県では県教育委員会委員から、障害児が生まれるのを減らせないかという差別発言が飛び出し、多くの抗議の声があがりました。全国連も抗議し会員に呼びかけました。

こうした取り組みはしてきましたが、なかなかインクルーシブ教育の実現や制度改革はすすんでいません。現実にある制度は、何重もの法制度によってできており、それを変えることは容易ではありません。しかしそれだけに、逆にその法制度の一部が変わっていくことはその制度全体の変化もあり得るのです。その意味で障害者権利条約や障害者基本法、差別解消法といった法令を手がかりに取り組むことは改革の大きな手がかりになるはずです。とはいうものの、障害者権利条約の国連人権委員会へのカウンターレポートの準備もなかなかできていないのが実情です。さまざまな体制作りをしながらさらなる取り組みをしていかなければなりません。

③ 会報・広報の活動

活動の呼びかけや問題の提起、日常的な相談の様子、また集会などの報告、各地の会報からの紹介、そして会の現況といったことを掲載し、年10回の会報の発行を何とかやりぬきました。しかし、原稿依頼に苦労することもあり、誰に何を書いてもらったらいいのかが課題だと思います。身近な人たちだけでけでなく、それぞれの課題に取り組んでるがまだ出会えていない人たちの情報を集めていくことも考えていかなければと思います。

今年は、予定より遅れましたが『新版「障害児と学校」にかかわる法令集』を発行しました。また長谷川代表が『康ちゃんの空』を復刻し、その売り上げは全国連の収入となることになりました。これまでの書籍、DVD、リーフレット等も各地の集会の際に売ることで、一定広めていくことができました。また事務所へ寄せられる注文にも出来るだけ早く対応しました。

ネット社会となり、その中での情報の発信が重要になってきています。全国連のホームページもあるのですが、集会やホットラインの宣伝などでまだまだ有効的に使えていません。また、フェイスブックやツイッター、ラインなども利用しておらず、ホームページと合わせてもっと活用したいのですが、なかなかその体制ができていません。現在ホームページ上でのネットワーク作りを進めています。メールについては、全国連の窓口として一定の役割をはたして機能しています。会の中での連絡、情報のやり取りとしてのメーリングリストももっとうまく使えるようにできたらというところです。運営委員や世話人との間での情報の交換がもっとできればと思います。

④ 集会・学習会等の開催

文科省交渉として話し合いの場を持ちました。私たちの運動を理解し協力をいただいている神本美恵子議員事務所の紹介を得ました。付き添い問題、合理的配慮など一定迫ることはできましたが、対応が特別支援教育という枠組みや立場をなかなか突破出来ず、十分な言質を得ることはできていません。限界があるということもありますが、それをどうしていくかが課題です。

今年の全国交流集会は神奈川県横浜市のLプラザで10月3日、4日に開催されました。現地の実行委員会を重ねて、5月にはプレ集会も実施し、集会は300人を超える多くの参加で盛り上がりました。こうした集会の成功を運動に活かしていけたらと思います。来年は大阪で高校集会が開催されます。運動の根っこは同じです。つなげて行けたらと思います。

DPIの全国集会(福島)や卒後の会の集会(愛媛)へも参加し、つながってきました。夏頃から顕在化してきた「多様な教育機会確保法」に関わる集会へも参加してきました。

また、付き添いの強制をなくすキャンペーンやデータバンクの学習会、インクルネットなどとは、参加することやメーリングリストによって、協同的に情報の共有をしたり共に活動したりすることが出来ました。

⑤ 組織の強化と運営の活性化

全国連絡会が全国各地の活動する団体や個人をつないでいる会であり、そのつながりの中心にあり、つながりの中でやってきている役割については先に述べました。組織としては、そういう役割が機能していくように維持し運営がされていく必要があります。

活動のまとめ、そしてその後の活動を見通して、まずは文科省交渉から始まり、本年度は拡大編集会議も設定し、総会・世話人会、そして交流会を行うところから活動をすすめました。活動を継続的に支えていくべき会報は予定した年間10号を発行しましたが、それに合わせて編集委員会、事務局会、運営委員会を開催しました。時間的にも、人数的にも厳しいこともありました。会報発行、発送の作業は、運営委員会の日にあててやってもらったこと、何人も作業を手伝ってくれたこともあり、それなりに順調にできました。そうはいってもやはり参加体制は課題です。

会を組織として維持、運営して行くことは大変重要です。会員は名簿上では約700人いますが、新入会員もいる反面、やめていかれる方もいます。会費の納入がない方もいます。

会費の納入、請求、そして会計管理、事務所での相談やさまざまな連絡への対応など、分担や当番でやっていますが、事務所に誰もいない時もあり、人員体制が手薄な状態は課題です。

2016年度の活動に向けて

私たち全国連の「地域の学校で共に学び共に育つ教育」を求める運動は35年目に入ります。2016年度も私たち全国連は全国の各地の共生共育の教育、インクルーシブ教育を求めて運動している仲間をつなぎ、そしてその中心にあって、最大限のとり組みを進めます。

2016年度は、4月より差別解消法が施行され、合理的配慮の具体的なあり方が現れてきます。それとも関わる付き添いの強制の問題もさらに課題となってくると思います。

今こそこうした制度的な変化を実体化し、教育、生活の現場での取り組みの展開をしていきましょう。

① 相談・支援の活動
② インクルーシブ教育実現と制度改革の取り組み
③ 会報・広報の活動
④ 集会・学習会等の開催
⑤  組織の強化と運営の活性化

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 2016年度の運動方針(案)/マイナンバー制度と就学運動/普通学校もあかんねん その15/ひとりだち/運営委員会こぼれ話/●相談からコーナー遅いことはいけないことか/事務局から/事務局カレンダー