障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2017年7月356号巻頭文

就学相談へ行く親子に声をかける 就学・進学ホットラインに取り組んで

埼玉県・会員  竹迫和子

障害児の高校入学運動が始まる前後から、かれこれ三十年ほどホットラインと県交渉は続けてきている。長く続ければいいというものではなくて、こんなことはやらなくても一緒に学べるようになることを夢見ながら、現実にはより細かく分ける方向へ進み、続けている。

就学・進学ホットラインは年に1~2回実施し、今回で四十一回目となった。普通学級への就学や高校入学の希望が多い頃には二十件近くの電話相談があったが、最近はとても少なくなっている。

相談の内容も、通常学級に就学したいがどうしたらいいかとか、通常学級にいて毎年就学指導をされ悩んでいるとか、高校受験をしたいといったものであったが、最近は、通常学級と特別支援学級のどちらがいいかとか、特別支援学級に在籍するが高校へ行けるかといったものがふえていて、どうしてもみんなと一緒に学びたいという相談は少なくなっている。

生まれた時から、いや生まれる前からふり分けが進んでいる中で、子育て中の親たちにどのようにして〝一緒に学び育つことが大切〟と伝えるかが不可欠の課題なのだが、今一つ具体的な取り組みができないままで来ている。今年は、さいたま市の広報に来年就学者を対象に「特別支援教育の就学説明会」が市内四カ所で開催されるという情報が載っていて、そこに参加する親たちに「障害児の就学・進学ホットライン」と「いっしょにいこうよ! 夏の集会」のチラシを配りに行こうということになった。開催場所は区役所やコミュニティセンターで、説明会のある部屋の近くに待機して、終了後に出てくる親たちに手渡ししたが、その数の多さに驚いた。最も多かったのはさいたま市役所で行われたもので、用意したチラシが足りなくなって、五十人余り参加したのではないかと思われた。また、他の三カ所では二十~三十枚配ったので、合計で百人を十分超える数である。さいたま市は合併によりかなり広く人口も多いのだが、その数の多さには愕然とさせられた。たまに警戒して受け取らない人もいたが、いろんな情報が欲しいのよねと言いながら受け取る人もいた。

「障害児の就学・進学ホットライン」は六月二十一日、二十二日の二日間で、埼玉障害者自立生活協会の事務所を借りて、親・当事者・教員・応援者が交替で電話番に入り行った。事前に県庁記者クラブで記者会見を行い、また後日に個別に記者さんたちに働きかけて新聞に掲載してもらった。毎年働きかけるとなんとかお知らせ的には載せてもらえている。今年は若い記者さんたちがこれまでの経過をよく知らなくて、逆に熱心に話を聞いてくれた。差別解消法の施行や津久井やまゆり園の殺傷事件などの影響もあるのだろうかと思われる。電話相談だけでなく直接会って話すほうが伝わりやすいことや、仕事の都合などで電話できなかった人たちが休日の集会なら参加できるし、講演も親の体験の話でとても参考になると伝えたところ、朝日新聞ではホットラインと夏の集会をセットで記事にしてくれた。その記事をフェイスブックで流した。記者にお願いする時に、学校時代に障害のある子どもたちに出会ったかなどたずねたら、自分のクラスに障害のある子がいて、あまり積極的には関われなかったことが気になっているということを話してくれた。特別支援学級があったとか、交流したとかと違い、しっかり印象に残っている。他に毎日新聞、東京新聞にも掲載された。

電話相談は8件あった。来年就学で通常学級を希望しているが教育センターから特別支援学級の説明会の案内が来ている、脳性まひで通常学級で学んできたが行ける高校があるか知りたいといったものもあったが、小学校の特別支援学級に通っているができれば高校に行きたいので中学校への進学について悩んでいるとか、中学校の支援学級だが進路は支援学校だけではないだろう、高校へ行きたいが内申書がどうなるのかというもの、また、高等特別支援学校で就労指導が理由で不登校になっているとか、特別支援学校高等部から大学に進学するがトイレ介助の支援策はないのかといった、支援学級や支援学校からの相談が5件もあった。また、塾の先生からの相談では、学習の遅れやコミュニケーションが難しい面があるが、このまま高校受験でいいのか、障害のある子どもの進路のことがよくわからないという相談もあった。以前なら、高校受験したいと塾に来れば、なんとかめんどうみてくれただろうが、特別支援教育の情報が広まっていて、塾の先生も迷わせているようである。

新聞を見ての相談がほとんどだが、フェイスブックや「わらじの会」会報、知人からの情報というものもあった。相談内容を見ると、分けられたところにいて一緒の方向をめざしたいが決断するまでにはいかず、慎重で氏名・住所なども告げてもらえないので継続的な連絡・応援もできないものもあり、分けられた状況の深刻さを感じる。

七月八日の「いっしょにいこうよ! 夏の集会」では、『ビバ! インクル―ジョン』の著者である柴田靖子さんにお話をしてもらう。この会報でも集会の紹介をしてもらっている。チラシを受け取ったり、新聞記事やインターネットで見たり、電話をかけてきた人たちも参加してくれることを願っている。

 
 

ちょっと待って 就学相談に行く前に

東京都・運営委員  円谷陽子

練馬区では10月に来年就学予定児の全家庭に校区の小学校への「就学通知と就学時健診」の通知書が届きます。

校区の学校ならばそのまま普通学級にも入れるはずです。ところが就学相談を受けた子どもは、10月には既に就学相談専門の委員によって「支援学級適」「支援学校適」と判定されているので、就学通知を受け取った時点では保護者は普通学級への就学を考え難くなっています。

もともと練馬区は特殊教育と言っていた時代から今日まで、子どもの発達に焦点を当てた「子どもを分ける教育」に熱心で、就学前の療育や母子保健にも力を入れてきました。

最近は乳幼児健診や相談機関の充実で、早くから就学先を支援学級や支援学校へ決めてしまう保護者が多くなったようです。区報の就学相談説明会のお知らせでもズバリ「来年4月に小学校の特別支援学(知的障害や情緒障害などのあるお子さんが通う学級)への就学を考えている方を対象に、就学相談を行います・・・」と書いてあります。少し前までは「知的な面や情緒面、身体の発達に気がかりな点のあるお子さんの就学相談・・・」という表現でしたが。

そこで、私たち「子どもを分けない教育を考える会」では、毎年6月始めに教育委員会が開く就学相談説明会に参加して、会場の出口で『ちょっと待って 就学相談に行く前に』のリーフレットを配ることにしています。

東京都による特別支援教室設置のせいもあるでしょうが、説明会の参加者は年々増加して、昨年は小学一年生約5600人のうち150人余、今年は200人ほどの参加で、2年続けて教育委員会の用意した資料が足りない状況でした。

子どもは子どもの中で育ちます。就学時に障害のあるなしで学ぶ場を分けてしまったら、子どもたちが次に出会えるのは、いつのことでしょうか。子どもの頃からいっしょにいれば互いわかり合え、インクルージョンの社会の基礎になります。そう考えると、就学先を決めるこの時期に特別支援教育を選ばされないための情報を届けることが大事です。

今年は4人で配ったせいもあって、受け取りはほぼ100%でした。この後は、電話での問い合わせやホームページへのアクセス数が若干増えました。 こんなエピソードがありました。就学相談を受けるに当たって就学相談に関わる関係機関への照会についてという書類に承諾のサインを求められます。それに対して、そんなのおかしいイヤだと就学相談を受けないことにした保護者がいました。新しい動きだと思いました。

毎年リーフレットを読んで普通学級に決める保護者が少なくとも1人はでてきます。

本音では、普通学級へ入れたいと考える保護者は多いと聞きます。

それを妨げている理由の一つに乳幼児からの健診や相談があります。そこになんとか特別支援教育だけの情報ではなく、「普通学級に入れたい」という当事者・保護者をサポートする情報をとどける必要があると思っています。

他、記事をお読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。