2010年6月27日

2010年4月26日 内閣府の第9回障がい者制度改革推進会議で、当会がヒヤリングを受けました。その時に提出した「意見書」と「補足資料」をアップします。

2010年4月26日

障害児の教育制度改革への提言(改訂版)

障害児を普通学校へ・全国連絡会  代表 徳田 茂

1.はじめに

 障がい者制度改革推進会議の構成員のみなさまが、障害者権利条約のインクルージョンの理念をわが国において具現化するために、驚異的なスピードで、中身の濃い審議を進めていることに対して、心より敬意と感謝の気持ちをお伝えします。

3月19日の第5回の会議の中で「教育」について審議され、そこで、どの子も地域の学校で受け止めることが確認されたことについて、私たちは深い共感を覚えると同時に、大いに勇気づけられ、励まされました。

全国には、今も、3月になっても就学先が決まらない子や、保護者が付き添えないことを理由に、学校行事や授業に参加できない子どもがいます。高校に入学できずに15歳の春を迎えている人たちが何人もいます。受検者数が定員を満たしていないにもかかわらず、障害を理由に合格をさせないのです。高校生になりたくても、障害の壁が立ちはだかっているのです。

障害者権利条約の理念と、現行の日本の教育制度との間には大きな乖離があります。このような状況を一日も早く解消するために、第5回の推進会議で出された方向に沿って、障害者権利条約の理念に基づいて国内法を抜本改正し、是非ともインクルーシブ教育を制度化しなければならないと、強く思っています。そのような思いを込めて、いくつかの提言をさせていただきます。

2.障害児を普通学校へ・全国連絡会の紹介

私たちの会は、「近所の友だちといっしょに学校へ行きたい」「きょうだいの行っている学校に入りたい」という、そんな当たり前の願いをなんとか実現したいと1981年に発足しました。以来、障害があってもなくても分けないことを原則とし、「地域で共に学び共に育ち合う教育」を求め、その実現に向けて活動してきました。現在、全国に約750名の会員がおり、200を超えるグループが各地域で活動しています。

毎月会報を発行し、情報を交換し、それぞれの地域の状況を交流しあっています。事務局には、全国から、就学や進学、学校の対応についての相談が電話やメールで届いています。2年に一度の全国交流集会は15回目を迎え、『障害児』の高校進学を実現する全国交流集会は9回を迎えます。また、発足当時からの会員のお子さんは40歳を超え、地域で生きる活動をしています。

長年にわたり、わが国では「原則分離」の学校教育制度が続いていて、その制度のもとで、数え切れないほどの親子が胸を潰される思いをしてきました。行政や学校現場の人たちから心ない言葉を投げかけられたり、理不尽な差別を受けて、多くの親子が生きていく希望すら失いかねないような経験をしてきました。私たちは、そうした家族の悲痛な訴えや無念な思いを聞きながら、たがいに支え合って歩み続けてきました。

多くの障害児とその家族を差別し苦しめてきた従来の学校教育制度が根本的に改められ、インクルーシブ教育制度がわが国において、一日も早く実現されることを会として切望します。

3.特別支援教育ではなくインクルーシブ教育を

わが国の障害児教育は、一貫して「分離別学」が原則でした。2007年度より特別支援教育が本格実施されました。「場の教育からニーズの教育への転換」と言われて始まりましたが、この3年間で、特別支援学校や特別支援学級に在籍する児童・生徒がかつてない割合で増加しています。これは、場を分けたままでニーズに対応してきた結果です。

そのニーズも、障害の定義を医療モデルでとらえ、その克服のための個別ニーズです。つまり、特別支援教育は、名称は変更しましたが、その内容は従来の特殊教育の分離体制をいっそう強化するものになっています。さらに、普通学級に在籍しているLD・ADHD等の発達障害児と言われる児童・生徒をその対象にしたことにより、いっそうインクルージョンに反する結果を学校現場にもたらしています。

これでは、障害者権利条約第24条の中にいう「締約国は、障害者を排除しないあらゆる段階の教育制度および生涯学習を確保しなければならない」という規定に抵触します。

昨今においては、さまざまな立場の人たちがインクルーシブ教育を取り上げるようになっていて、中には、現行の特別支援教育をもってインクルーシブ教育とみなそうとする人たちさえいます。特別支援教育は、障害の種類と程度によって子どもを振り分けようとするものであり、私たちにはそれがインクルーシブ教育の理念に沿うものだとはとうてい思えません。

障害児を普通学校へ・全国連絡会をはじめ、全国各地の関係者が、多くの制約のもと「いろいろな子が共に学び共に育ち合う教育=共生教育」の実践やそれに向けての運動を積み重ねてきました。その取り組みを通じて、私たちは、子どもたちが互いに支え合いながら、学び合い育ち合っていくことの大切さを学んできました。

今回の「制度改革」を機会に、我が国において共生教育を実践の原理としたインクルーシブ教育制度が実現されることを強く願っています。

4.就学先の決定について

(1)障害者権利条約の第24条「教育」において、締約国は障害のある人があらゆる段階においてインクルーシブな教育を受ける権利を保障するとしています。

そして、その2において、障害のある人が「障害を理由として一般教育制度から排除されることのないこと(a)」や「他の者との平等を基礎として、自己の住む地域社会において、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育をアクセスすることができること(b)」と規定されています。

しかるにわが国においては、小・中学校の就学時において、子どもを障害の種類と程度に応じて振り分ける制度が温存されています。この制度はインクルーシブ教育の理念に明らかに反しています。

(2)どの子も地域の子どもとして地域の学校で共に学び育ち合っていける教育制度実現に向けて、私たちは就学先の決定について次のように提言します。

5.特別支援学級と特別支援教室について

普通学級で必要な支援を行うことを原則とすべきです。私たちは特別支援学級は、教育の場を分けることになるので、設置すべきではないと考えています。

私たちは、障害があっても必要な合理的配慮と支援によって普通学級で学ぶことができる教育がインクルーシブ教育だと考えています。籍を固定しておこなう特別支援学級での教育が、インクルーシブ教育にあたらないことは明らかです。

また、普通学級に籍をおきながら必要に応じて通級する特別支援教室の設置も、結果として場を分けることになります。この教室を設置するにあたっては、そうした危険性も十分に踏まえて、慎重な姿勢が求められます。必要な合理的配慮や支援はまさに分けないための方法として考えられるべきことです。私たちは、何よりもまず普通学級の中で人的・物的条件等を整えて、どの子も共に学び育ち合える教育がおこなわれるようにすべきだと考えます。

6.教育の場における合理的配慮について

(1)障害者権利条約の中で、「合理的配慮を行わないことは、差別である」と規定されたことは、画期的なことです。

私たちは、障害者権利条約のこの差別規定がわが国の学校教育制度の中に明確に位置づけられるべきであると考えます。

特殊教育制度から特別支援教育制度になっても、障害の重い子は、地域の学校へ来るべきではないとみなされています。その考えが根底にあるために、やっとの思いで地域の学校へ入った子が、必要な支援を得られず、大変に辛い思いをするということがあちこちで起きています。

例えば、特別なことはしないということで、水分補給の必要な子にそれをしなかったり、冬場に体温が下がってしまう子に対して何の方策も講じなかったりといったことが起こっています。これは教育以前の問題で、子どもの健康にも大きく影響を及ぼすことであるにもかかわらず、「この学校へ来るべき子ではない」との思いから、学校側が、冷たい態度をとってしまうのだと思います。

私たちは、どの子も地域の普通学級に籍が保障されればそれだけでよいと考えているわけではなく、一人ひとりの子どもが必要な支援・指導を受けながら育っていけるようにと願っています。

(2)合理的配慮の具体的な内容については、当事者(本人・保護者)と学校側が十分に話し合い、相互の合意を得られるようにすべきです。

何が合理的配慮であるかについては、一人ひとりの子どもによって異なります。また、周りとの関わりの中で、その具体的内容が異なってきます。そうしたことを考慮に入れ、合理的配慮の具体化においては、関係者の合意形成を何より大切にすべきです。当事者の同意を得ないまま学校の考える合理的配慮がなされていくという事態が起こることを、私たちは危惧します。

(3)障害のある子が普通学級で学ぶことができるための環境整備が必要です。

本来、子どもに関することは教員がするべきです。人手が必要なら教員の数を増やすべきです。障害のある子が普通学級で学ぶのを手伝ったり、生活面で手伝ったりする支援員の配置については、あくまでも、障害児本人及び保護者の同意を得たうえで行うものとすべきです。また、支援員を配置するのであるなら、その身分保障をきちんとすべきです。

(4)医療的ケアを必要とされている子が普通学級で学ぶことができるように、早急に、関係法令の改正等を行っていくことが求められます。その子にとって必要なケアが適切になされれば、医療的ケアを必要とされる子も十分に、普通学級の中で生活し学習していけます。

7.就学前の障害児の家族への支援について

近年、就学前の障害児の保護者に対して、以前より早くから「就学相談」という形で教育委員会の人が関わることが増えてきています。そこでは当然のことながら、特別支援教育の制度に沿った説明がなされています。もっと端的に言えば、特別支援教育の説明だけがなされています。

そのため多くの保護者は、障害が重い子でも地域の学校へ通えることや、いろんな子が共に学び育ち合っている例が数多くあることなど、まったく知らされていません。

また、障害の重い幼児の親の多くは、わが子が2,3才の頃にすでに、「うちの子は特別支援学校へ行くもの」と思い込んでいます。親自身が分けられた環境で育ってきたことや、子どもの障害がわかったときから「別の学校へ行くのがよい」という情報ばかりに接していることから、そうなってしまっているものと思われます。

通園施設の取り組みの中で共生教育の実践の情報を得たり、気持ちの整理をしたりすることで、障害の重いわが子を地域の学校へ入れてやりたいと思うようになった保護者がたくさんいます。この例からもわかるように、障害のあるわが子が、地域の学校へ通えて、友だちと共に学び育っていけることがわかれば、多くの保護者は、わが子を地域の学校へ通わせたいと思うようになっていきます。

私たちは、インクルーシブ教育の制度化と平行して、早期発見・早期相談が、早期分離につながっているような現行の働きかけを早急に改め、地域の学校への就学に向けた支援を柱にした相談を充実させるべきであると考えます。

8.おわりに

わが国では長年にわたり、「障害のある人は別の所で生活していくもの」という考えが常識となっていました。教育においては、「専門の先生による、ていねいな教育」というあたりのよい言葉により、障害児を多くの子どもたちから切り離すという、差別的側面が隠されてきました。

その中で、数え切れないほどの親子が悲痛な思いや悔しい思いをしてきました。「ここは普通の子の通う学校で、お宅の子のような子の通うところではないんですよ。」「子どもを犠牲にして親のエゴを通そうとしている。」「お宅のお子さんがいると、他の子に迷惑なんですよ。お母さん、それがわかりませんか。」「お宅のお子さんのために、担任の先生が体を痛めてしまったんですよ。」など、人権無視の言葉を投げかけられてきました。愛おしみ、大切に育ててきたわが子を、まるで邪魔者のように言われたときの保護者の思いがどれほどのものか、構成員のみなさまには容易に想像していただけるものと思います。

深い悲しみや強い憤りを共有し合いながら、全国各地で多くの障害児の保護者が、「子どもと子どもを分けない教育」「いろんな子どもが共に学び育ち合っていける教育」の実現を願って闘ってきました。長年かかって、少しは地域の学校への壁が低くなりました。しかし、特別支援教育がスタートして、また地域の学校、とりわけ普通学級の壁は、障害児の親子にとって高いものとなってしまいました。

特別支援教育は「個のニーズ」を強調していますが、子どもと子どもが、ぶつかり合ったり、助け合ったりして共に生きることや、その中で育ち合っていくことの大切さには全くふれていません。私たちは長年の経験を通じて、障害のあるなしに関わらず、子どもは多くの子どもたちとの関わりの中で、もまれたり励まされたりしながら育っていくことを学んできました。ですから私たちは、子どもと子どもを切り離して考える「個別支援」ではなく、「生き合い育ち合う教育=共生教育」をベースとした教育の実現を願っています。

障害児を普通学級から排除してしまうことは、障害児を不幸にするばかりでなく、周りの子どもたちも不幸にしてしまいます。障害のない子どもたちの多くは、障害児と付き合う機会のないまま大きくなっていきます。文科省は、「交流及び共同学習の充実」と言っていますが、そこでは「お客様」扱いされ、差別意識が助長されることもあります。若い人たちに聞くと、多くの人が、障害のある人たちを見ると、「気持ちが悪い」「怖い」「かわいそう」といった感情を持ってしまうと言います。障害児を排除した制度の中で育つ子どもは、その制度の中で差別者として育ってしまうのです。「分ける教育」はどの子にとっても、その人間形成において決して好ましいものとは言えません。

現場の先生たちの中には、現行の分離制度に基づいた「適正就学」という意識が浸透しています。ですから、目の前の子どものことを真面目に考えて、「ここにいるよりは」ということで、分けようとしてしまいます。先生たちは、真面目です。制度が変わって、「この子はここに来る子なんだ、ここにいて当たり前の子なんだ」ということになれば、また、真面目に考えて、インクルーシブ教育に向けた取り組みを進めていくと思います。

子どもたちをこれ以上不幸にしないために、一日も早く、「共に学び育ち合っていく教育」「インクルーシブで、排除のない教育」の制度化を実現させなければならない。私たちは今、切実にそう考えています。

障がい者制度改革推進会議でのみなさまの審議を見聞きし、今ようやく、わが国においても、障害のある人が障害のない人と同じように、一人の市民として社会の中で生きていける可能性が見えてきたようで、たいへん勇気づけられています。教育の面においても、インクル-ジョンの理念に沿った制度が実現されることを強く願っています。

<補足資料>

資料1

平成  年  月  日

保護者 ○○○○ 様
(就学児童氏名) ○○ ○○さん
(就学校) 大田区立○○○小学校

大田区教育委員会

お子さんの入学にあたりまして(保護者へのお願い)

 お子様の入学おめでとうございます。
 さて、この度のお子様の入学にあたりまして、お子様の育ちを大切にしお子さんとともに周りのお子さんも学習に支障なく安全で円滑な学校生活が送れるように、下記の事項につきまして、御確認の上、御理解と御協力をお願いいたします。

1 お子様の登下校では、当面の間、安全が確保されるまで保護者の付き添いをお願いします。

2 学校生活がお子さんにも回りのお子さんにも支障なくスムーズに送れるよう、当面の間、環境に慣れ安全・安心等が確保されるまで、学習での保護者の付き添いをお願いします。また、ほかに、校外学習などで安全管理の点で必要と思われる場合には、付き添いをお願いします。

3 お子様の学校での様子や家庭での様子について、学校や教育相談などとの密接な連絡・相談をお願いいたします。

4 お子様の適切な教育環境については、お子さんの育ちや特性に応じたよりよい状況・環境を求めて、話し合いを継続していきます。
  定期的(月ごとや学期ごと、年度ごと)、また必要に応じてその都度、教育センターとも連携し継続的に話し合いを続けて見直しを実施していきます。特に、年度の区切りの時期には教育センターとも協力し、適正就学について相談を行っていきましょう。

上記のこと確認しました。

大田区立○○小学校       
  校長             印
  保護者名           印

・大田区の保護者からFAXで送られてきたものを、一字一句変えずに作り直したものです。
・この確認書に署名・捺印しないと就学通知が送られてきません。
・今年も、3月31日・4月2日になって、就学通知が届いた事例があります。

資料2

22東村山市規則第36号
東村山市立学校支援員配置費用の補助に関する規則

(目的)
第1条 この規則は、肢体不白由者である児童又は生徒(以下「児童生徒」という。)の保護者に対し、当該児童生徒の学校内での生活的支援を行う支援員の配置に要する費用の一部を補助することにより、保護者の負担を軽減し、もって児童生徒の学校生活における生活習慣の確立及び社会的な白立を図り、教育活動の充実に資することを目的とする。
~略~

(補助対象者)
第3条 補助の対象者は、次の各号に掲げる要件をいずれも満たす児童生徒の保護者とする。
(1)東村山市内に居住していること。
(2)東村山市立学校に在籍していること。
(3)東村山市就学支援委員会において、特別支援学校以外の学校で、かつ、 特別支援学級以外の学級への就学が適当又は可能と判断されていること。
(4)支援員の生活的支援が必要と認められること。

(補助金の額)
第4条 補助金の額は、児童生徒1人につき、現に支援員の配置に要した額(その額が20万円を超えるときは、20万円)を限度として、予算の範囲内で市長が定める額とする。

(申請)
第5条 補助金の交付を受けようとする保護者(以下「申請者」という。)は、東村山市立学校支援員配置費用補助金交付申請書(第1号様式)に次の各号に掲げる書類を添えて、市長に申請しなければならない。
(1)支援員の配置に要する費用がわかる書類
(2)支援員の身分等がわかる書類
   ~以下15条まで 略~

・東村山市では、4月より、上記のような規則ができ、保護者が付き添うことができずに、2年生として入学式に参加できなかった児童がいます。保護者から、以下のようなメールが届きました。

4月6日 ○○の始業式の日の様子

朝、両親で○○を学校へ連れていきました。
支援員はおらず、始業式が始まる前に校長と校長室で話しをしたところ、補助金制度を使って親の責任でやることになっていると市教委からは聞いているので、親から何も言ってきてないので全部親がやると思っていたと言いました。

親が付き添うとは一言も言っていなし、市教委へはこれまで通り学校へお願いすると伝えているのにおかしいといいましたが、校長は市教委からそう聞いているとの一点張りで、始業式が始まる時間のため、時間切れとなりました。

始業式のために○○は親が校庭まで連れていきました。
始業式が終わり、担任が決まってクラスに戻ることになりましたが、2年生のクラスはこれまでがそうであったように3階となっていました。

○○が教室で座る、座位保持椅子を家から運んで来ていたので、それを3階まで運びましたが、相変わらず誰も手伝おうともせず、両親二人でもって運びました。その間○○は昇降口で一人待たされることになりました。

椅子を運んだり、校庭から昇降口まで行くのも車椅子のため遠回りしたので、クラスについたのは他のクラスメートよりだいぶ遅れていました。一応担任から両親にも挨拶がありましたが、当然親が全部やるものと思っているようで、その日の入学式までの流れを説明してきました。この後すぐに入学式の練習のために音楽室(一階にある)に移動し、また教室に戻り待機、さらに体育館の外に集合でした。この移動を何の手伝いもせず親にやらせようと思っているようでした。他の生徒は音楽室に移動しましたが、同じく1階にいる○○を連れて校長室に行き校長と話をしました。親は付くつもりはないと伝えると校長はそれは困るといい、困るとはどういう事か言うと、できないとはっきりと言いました。学校の責任でやってもらわないと困るといっても、あくまでできないと言い、教育委員会が○○の入学を決めたのだから教育委員会に頼んでくれ、校長には責任はない。私に言われても困る。1年の時は支援員がついていてやってきたのだから、支援員がいなければ学校ではできない。誰ができないと言っているのか言うと、学校の先生皆がそう思っているともいいました。

このまま○○を置いて帰るとどうされますかと言うと、○○さんが大事ですから、誰も人がいないので事務室に置いておくしか無いと答えました。入学式にも出席させずに、○○を事務室に監禁しておくとは酷いですといって、○○を連れてかえってきました。○○と泣きながら帰ってきました。

4月20日現在、私たちは、以下の内容で、市教委と学校長と話し合いを続けています。

1 東村山の規則は以下の前提および条件で補助金を交付することとしています。
(1) 肢体不自由者が普通学級で就学することに必要な支援に要する費用は保護者が負担すること。
(2) 就学支援委員会が普通学級での就学が適当と判断したこと。
(3) 保護者からの申請によること。

2 これは以下の点で憲法26条、14条、学校教育法に違反しています。
憲法は保護者にわが子に義務教育を受けさせる義務を課しています。この義務はすべての国民に課せられたものであり、そのため保護者には負担を課さないということが前提となっています。
具体的には、無償として経済的負担をさせず、また通学の負担を課さないよう保護者と子どもの生活圏内に学校を設置する等のことです。障害のない子は地域の無償の小中学校に無条件で就学できるのですから、これが保障されています。
にもかかわらず障害のある子の保護者には、義務教育が有償であるとか、保護者が通学の援助をしなければ通学しえないところの遠隔地通学が強制されることは、障害のない子の保護者と比べ明らかに不利益取り扱いであり、憲法26条、14条に反します。

 

東村山の規則が、義務教育でありながら、学校内での生活的支援をすべて保護者の負担とする前提自体が、義務教育制度に反します。義務教育を学校教育として制度化したのですから、学校生活に要する人員および費用はすべて行政の負担です。因みに憲法は、義務教育を学校教育とするとは決めていません。これは言わずもがなのこととして学校教育法で定められているのですが、それぞれの家庭で家庭教師が教育することを義務教育のシステムとして採用することも憲法上はできないことではありません。でも、そのシステムを取らずに、学校という空間で生活しながら教育を受けさせることを保護者に義務づけたのですから、この生活に要する人員および費用も行政の負担とすることになりました。行政は時々勘違いして、生活的支援は保護者がするべきだと考えてしまうことがありますが、これは義務教育を学校教育として制度化したことに伴うものなのですから、いいかえれば保護者の生活する場所と離れたところで教育することにした結果、生活的支援は保護者がする必要がないものとして制度化したのですから、これを保護者が負担するなどということは想定されていないのです。

障害のある子の保護者だけがこれを負担するべきなどとすることは、障害故の負担であり明らかに不平等、差別的取り扱いです。
障害者権利条約はどの子も地域の学校で学ぶことができ、地域の学校で就学を実質的に保障されるよう、行政に合理的配慮と必要な支援を義務付けています。

権利条約を批准することはすでに署名もしており、国際的に約束されています。
よってこれに反することを現時点ですることは国際法上の信義に反します。障害のある子の学校内での生活的支援を保護者の負担とすることは、権利条約に明らかに反します。この点からもこれを認めることはできません。

規則は、保護者が全面的に負担することを前提とし、申請がある場合は行政が一部を補助するというシステムになっています。これは全く本末転倒なことです。かりに合理的配慮および必要な支援が大変に高額な負担で、これを行政が全面的に負担しきれないときは、やむをえない措置として保護者が一部負担することはあっても、その逆はありません。

ただし、これさえも義務教育はそもそも行政に国民皆教育を実現する条件整備義務を負わせているのですから、障害のある子に対する教育が「過度な負担」となるようなことは、わが国の国民生活水準からすると通常は考えられません。また、もしこれが特別支援学校、支援学級であるなら負担するが、普通学級であるから行政は負担せずに保護者の負担とする、ということであるなら、それは事実上特別支援学校、支援学級を強制しているものです。そのことは、このような差別的な取扱いをすることの何ら合理的理由とはなりえません。

資料3

障害の種類や程度にかかわらず、たくさんの障害のある子が普通学級で学んでいます。どの子も安心して楽しい学校生活が送れるよう、学校における人権意識啓発の一助になることを願ってこの資料を作成しました。当会に寄せられた事例をもとに作成しており、具体的でわかりやすい記述を心掛けています。ぜひ研修やいろいろな機会・場面でご活用いただければ幸いです。

<人権意識啓発チェックシート(1)>   作成:共に育つ教育を進める千葉県連絡会

※各項目を読んで、自分の思い当たる項目に印をつける活動をとおして、自らの教育活動を「人権」の視点から振り返ったり、教職員全体で話し合ったり、問題の共有や、共通理解を図る手がかりとして活用することができます。
※この項目がすべて人権侵害や差別にあたるというものではありませんが、一見問題がなさそうに見えるものでも、強引に行ったり、長期間続くと問題が生じるものもありますし、当事者サイドに立つことで見えてくることもあります。
あなたは,どう思いますか? (小・中学校教師/普通学級での障害のある子への対応)

学習 1 知的な遅れがあるのだから、みんなと同じ授業を受けても意味がないと思う。   
2 この子に手がかかり、他の子が学習する時間がけずられるのはどうかと思う。   
3 担任はクラス全体を見るので、その子の学習はサポートの職員に任せている。   
4 「こんな問題もできないなら、
ひまわりさん(支援学級)に行ってもらうよ」と言うことがある。
  
5 どうせ読めないので、みんなと同じプリントは渡していない。   
6 プールの時、本人だけ目立つように違う色の帽子をかぶらせている。   
7 作品の出来が拙いので、その子の作品は掲示していない。   
8 合奏が乱れないように、その子の楽器は音が出ないようにしておく。   
9 着替えに時間がかかるので、その子だけ体操服に着替えずに体育をさせている。   
10 体育の時間、車椅子の子は他の子と別にして歩行練習をさせている。   
11 授業中落ち着きがなくなったら、他の部屋に誘導している。   
12 親に知らせず、特別支援学級で授業を受けさせたり、取り出し授業をしている。   
13 発達年齢や知能指数がわからないと適切な指導はできないと思う。   
テスト・評価 14 通知表の評定欄に、空欄や斜線がある。   
15 テストの時他の子が集中できないので、その子だけ別室で受けさせている。   
16 クラスの平均点が下がるので、テスト結果の集計からその子の分は省いている。   
行事・特別活動 17 部活動への参加は任意なので、障害のある子は入部を遠慮してほしいと思う。   
18 職場体験の場所を探すのは大変なので、親に探してもらったら良いと思う。   
19 行事の際、障害のある子には医師の診断書の提出を求めている。   
20 障害のある子の進路指導は、高校ではなく特別支援学校の高等部を勧めている。   
生活 21 自立のために、着替えや教科の準備や移動などは
時間がかかっても手伝わず自分でやらせている。
他の子どもにも手伝わないようにと言っている。
  
22 字が書けない子の連絡帳を教師が書いてあげるのは、子どものためにならないと思う。   
23 危険なので、子どもたちが車椅子を押すことは禁止している。   
24 子ども同士が協力するように、その子の「お世話係」を決めている。   
25 人に手伝ってもらったら毎回「ありがとう」と言うよう指導している。   
26 給食当番や日直などはやらせていない。   
27 障害のある子は席替えのクジは引かせず、いつも教師の近くの席にしている。   
28 指や鉛筆などをなめたりするので、みんなに「汚い」と言われても仕方ない。   
29 写真撮影の時はいつも端っこに並ばせている。   
30 高学年になっても甘えてくるので、教師のひざの上に乗せて抱っこしてあげる。   
31 休み時間用に、その子専用の幼児番組の音楽カセットテープを用意している。   
基本 32 普通学級にいるのだから、配慮はできないし、しなくて良いと思う。   
33 普通学級ではなく、特別支援学校や特別支援学級に行く方が幸せだと思う。   
34 食事介助やおむつ交換、着替え、移動介助などは、教師の仕事ではないと思う。   
35 学校生活や学校行事に、親の付き添いを依頼したことがある。   
その他 36 説明しても理解できないし意思表示もしないので、本人に意見は聞かない。   
37 うまくしゃべれない子の親からいじめの訴えがあっても、
相手の子はやっていないと言うのだから、それは親の思い過ごしだと思う。
  
38 物がなくなった時、まっ先にその子ではないかと疑ったことがある。   
39 学校内で問題となるような行動がある時は、
親に話して家庭できちんと言い聞かせて指導してもらうと良いと思う。
  
40 保護者会で特別にその子の障害の状況を話してもらうよう保護者にお願いした。   
41 その子の汚れた洋服を、兄のクラスに届けて家に持って帰ってもらった。