障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2019年1月371号巻頭文

文科省に交渉(話し合い)を求め、要請文を提出します

障害児を普通学校へ・全国連絡会  事務局会

今年も、神本美恵子参議院議員の仲介で、文科省と交渉・話し合いをもちます。「道 徳の教科化」はあっという間に現場におりてきました。なぜ、「共に学ぶ」こと は現場に浸透しないのでしょうか。文科省の姿勢を問うていきます。 (事務局)

文部科学大臣 柴山 昌彦様

共に学ぶ共に育つ教育に関する要請書

2019年1月12日
障害児を普通学校へ・全国連絡会   代表  長谷川 律子

この度は、お忙しい中、話し合いの時間をつくって頂き、感謝申し上げます。

1981年に発足した「障害児を普通学校へ・全国連絡会」は、共に生きる社会は共 に学ぶ教室から生まれるという考えのもと、どの子も分け隔てられることなく、地域の 普通学級において共に学ぶ教育を求めて活動をしています。貴省とも二十数年に渡り毎 年話し合いを続けてきました。

国連の「障害者権利条約」の批准にむけ、国内法整備の一環として2013年に学校 教育法施行令が改正され、障害のある子どもの就学先決定の仕組みが見直されました。 また、同時に出された貴省の通知には、本人・保護者の意向を最大限尊重することが明記されました。

しかし、改正後5年経っても、私達のところには、適切な教育 をと特別支援教育を勧められたり、合理的配慮ができないから普 通学級では受け入れられないと言われているといった相談が後を 絶ちません。

そして昨年3月、神奈川県川崎市で、本人・保護者の意向は尊 重されず、地域の小学校への就学を希望していた男児の就学先が 支援学校と指定されました。同世代の子どもたちと共に学び育つ 環境を求めて、本人と保護者は、支援学校への就学通知の取り消 しと地域の小学校の就学指定を求めて、7月に提訴し、現在、係 争中です。

昨年の3月2日の貴省との話し合いの場において、「本人の意 思を無視して無理やりどちらかに追いやるのは適切ではない」と いう回答をいただいていますが、今まさに、不適切な状態が生じ ているのです。私たちは、このような事態が生じていることに、 激しい悲しみと怒りを禁じえません。

提訴することもできず、泣く泣く支援学校や支援学級への就学を強 いられた子どもたちは全国に多く存在します。だからこそ、児童 生徒数が減少しているにも関わらず、特別支援学校や支援学級の 在籍者数が増え続けているのです。

就学手続きの見直しが、言葉だけで終わっている貴省の姿勢が 問われています

私たちは、共生社会の実現のためには学校教育こそインクルー ジブな環境でなければならないと考えます。インクルーシブ教育 が推進されるよう、以下の点について、要請いたします。

1. 就学先決定については、「学校教育法施行令の一部改正につ いて(通知)25文科初第655号平成25年9月1日」に書かれてあ る通り、本人・保護者の希望が最大限尊重されるよう市町村教 育委員会に指導してください。

2. 改正された学校教育法施行令を受け、就学者全員を対象に地 域の学校への就学通知を出すように指導してください。

3. 普通学級に就学するための情報も就学相談において提供する よう働きかけてください。昨年の話し合いにおいて、「教育長を通して、保護者に適切 な情報を提供するようにお願いしている」との回答がありまし たが、「適切な情報」の具体的な内容とその周知手順の提示を 求めます。

4. 普通学級における合理的配慮がされていないために、本人及 び保護者に負担が強いられています。必要な合理的配慮がなさ れるようにしてください。

5.昨年の話し合いにおいて、「交流及び共同学習のガイドライン」 ではなく、「普通学級で共に学ぶためのガイドライン」の作成 を求めましが、「課に持ちかえって伝える」との回答をいただ いています。その後の進捗状況をお知らせください。  「共に学ぶためのガイドライン」を提示を求めます。

6.学校教育関係者にインクルーシブ教育に関する認識が薄く、今も医学モデルによる指導が行われて いるので、障害児が普通学級から排除 することが増えています。学校関係者 や教育委員会に対して、障害者権利条 約・障害者基本法・障害者差別解消法 の趣旨を徹底させてください。

以上


        

要請文とは別に、以下の4点について 事前に質問をし、その回答も含めて話し 合いをしていきます。

① 全国の公立小中学校のエレベーター の設置率

② 全国の公立小中学校における普通学 級で学ぶための支援員配置の実態

③ 就学時の健康診断マニュアルに改訂 によって変わった「適切な就学」と「適 正な就学」の違い

④ 児童生徒数が減少しているのに、特 別支援学級・学校に通う人数は増え続 けていることを具体的に数値で表した パラレポ委員会作成の表とグラフを提 示し、この現象に関する見解


※要請書は運営委員会で再検討してか ら提出します。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

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