障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2018年5月364号巻頭文

反芻しながら、こだわり続けて…50年

障害児を普通学校へ・全国連絡会 新事務局長 高木千恵子

50年?! 自己紹介

これまで一会員だった私が全国連の事務局に関わるようになって日も浅く、会員の皆様には 「新事務局長の高木さんってどんな人」と思う方も多いと思います。そこではじめに少しばか り自己紹介をします。
「そういえば、千恵子ちゃんって、いつも朝礼台にたって、先生の代わりに何やかやと言っ ていたねえ」と小・中学校時代の同級生から言われる子どもでした。そんな子が「女でも男と 同等に働ける仕事、そしてかわいそうな障害児たちのためになる仕事」として選んだのが、養 護学校の先生でした。当時は養護の先生? それは保健室の先生と間違われるほど、養護学校 はあまり知られていませんでした。
「私、差別なんかしていない」「障害者のために頑張っているのに」と落ち込んだのは、 1970年代前半に障害者解放運動が始まり、「養護学校の先生は、差別者だ」と突き付けら れた時でした。「障害者差別からの解放」の意味が理解できませんでした。だから府中療育セ ンター闘争や養護学校義務化阻止の文科省前デモの周辺をウロウロ・オロオロしていました。 混乱した状態からようやっと「~の為にから~と共に」がわかるようになって(自己批判)、養 護学校義務化阻止共闘会議に関わりました。「養護学校の先生がなぜ養護学校あかんねんを言 うのか」の批判にも、動揺しないようになってきました。
金井康治君の転校闘争が終わった頃、私は意を決し養護学校から市内の小学校へ移りました。 そして地域の学校の教員として普通学級で障害児を受け止め、共に学ぶことを求めていくこと にしました。 2011年に東日本大震災が起こり、3月末の退職を機に4月から被災した障害者の救援活 動の手伝いを始めました。障害者救援本部の中で障害者と共に活動をする経験は、健常者目線 の自分を意識させられ、「共に」の意味を再認識しました。そして救援 本部が閉じた後、全国連のお手伝いをしようと当番を引き受けたのが、 事務局長になるきっかけとなりました。

支援という名の管理体制がじわじわとやってきた

最近、支援、支援とよく聞きます。そしていろいろな場に使われて います。支援とは、「こんな支援がしてほしい」と当人が望んで受ける ものではありませんか。ですが当人が望む支援ではなく当人に必要な 支援が決められ、適切な支援でないと支援として認められないように なっています。
支援は、障害者総合支援法の中で「共生社会の実現」や「可能な限 り身近な地域で必要な支援を受けられる」といった理念の中で謳われ ています。2007年に特殊教育が特別支援教育となり、支援学級・ 支援センター・支援員・支援相談員などが出てきました。最近では、 学習支援・発達支援・教育支援・個別支援・子育て支援と支援が広が り続けています。そして乳幼児期から学齢期そして卒業し社会人になっ ても、「適切な」支援が決められてきました。これは、決められた支援 のなかに障害者を閉じ込めてしまう管理体制なのだと思います。 障害者権利条約を批准し、文科省はインクルーシブ教育をすすめる ことになっています。ですから合理的配慮がなされ、障害があっても 地域の学校で学ぶ子が増えていくはずなのです。ところが子どもの数 が減っているのに特別支援教育対象児が増えている、特別支援学校が 足りない、と言われています。おかしいですよね。それは、文科省が インクルーシブ教育をインクルーシブ教育システムと置き換え、適切 な支援と多様な学びの場を進めているからです。インクルーシブ教育 システムは、インクルーシブ教育ではありません。文科省にだまされ るなです。「その子に合った教育」「ニーズに応じた支援」の本質を見 破らなければなりません。 こうしたおかしなことは教育の場だけではないようです。地域生活 への移行がすすめられている精神病院では、空いた病室に認知症の方 や重度の障害者を入れるようになったと聞きます。また障害者の工賃 を高める施策が出されると、就労継続支援B型事業所は当事者たちに よりノルマを課すようになったり、生活介護事業所に移管したりする ケースが増えているそうです。また在宅復帰をすすめるようになった 介護老人保健施設では、長期入所者が出されるケースが多くなり、地 域包括ケアが十分でない中、誰が介護するのか問題になっていると聞 きます。障害者や高齢者が身近な地域で必要な支援を受けられる施策 を出しながら、当事者の状況に寄り添うことなく、支援や助成金を餌 にして、当事者たちの生き方を左右しようとする管理体制をすすめて いるとしか思えないのです。でもこれって障害者や高齢者だけでなく、 全ての人たちもそうなのかもしれません。なにせ、一億総活躍社会な のですから。

全国連の出番がますます増えるでしょう

こう、代表の長谷川さんが述べています。全国連は、障害を理由に 普通学校への就学を認めない教育委員会や学校に「NO」を言い続け ましょう。合理的配慮を認めさせましょう。文科省にはインクルーシ ブ教育を実施すべきだと訴えましょう。そして共に学ぶことの大切さ をもっともっと広めましょう。地域の皆さんの出番も増えていくこと でしょう。そして、インクルーシブ社会を若い世代にバトンタッチで きるように、知恵と力を寄せ合いましょう。
どうぞ皆さん、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 反芻しながら、こだわり続けて…50年/みんなと同じ環境で学ばせたい/「障害児」の高校入試の状況  (2018年春)/「パラレルレポート」を出そう/インクルーシブ教育について県議会質疑/●新聞記事「共生の実相」の紹介/●相談からコーナー 学習面で進歩がないのですが、どこか学力のつく良いところはないでしょうか? /各地の集会・相談案内/運営委員会こぼれ話 その19の1/事務局から/事務局カレンダー