障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2015年7号 336号巻頭文

差別解消法! 今が最後の頑張りどきです!!

東京都・運営委員  一木 玲子

この5月、茨城県の医療的ケアを要する中学生のAさんが京都奈良の修学旅行に行ってきました。ですが、事前に教育委員会から言われたのは、保護者が付き添うこと、介助者は保護者が探すこと、保護者と介助者の費用は保護者が負担すること、という3つの条件でした。じつは、小学校の時も同じ条件を突きつけられ、Aさんは修学旅行に行けていません。小学校で一番悲しかったことは、修学旅行に行けなかったことだとAさんから聞いたお母さんは、「茨城県に障害のある人の条例をつくる会」に相談します。そして、交渉の末、この3条件は撤回され、Aさんは無事修学旅行に行くことができました。ただ、交渉は困難を極めました。交渉の過程で、この3条件は差別に当たるという合意がなかなか取れませんでした。4月から施行された茨城県差別禁止条例の文章に照らし合わせて、ようやく、「そうですねえ…」と口ごもる感じ。はっきり「そうですね、これは差別ですね」とは言ってくれません。ですが、保護者さんにとって、条例があるということは、自分は間違ったことを言っていないんだ、今まで言えば言うほど私ってモンスターペアレントかしらって思えてきたけど、大きなバックアップになったとおっしゃっていました。

さて、差別解消法ですが、来年4月から施行され、障害を理由とした「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」は差別であるとして禁止されます。でも、法律にも、国の基本方針にも、学校教育においてどのような行為が不当な差別的取扱いなのか、どこまで合理的配慮がなされるのか、具体的なことが書かれていません。それが記載されるのは、各省庁が策定する対応要領や対応指針とよばれるガイドラインです。まさに今、文部科学省で「障害者差別解消法の実施に関する調査研究協力者会議」が開催されており、上記について議論されています。第一回目は6月17日にはじまり、7月21日の第4回会議にて議論は終わり。8月にはパブコメがあり、9月上旬には決定・公開という非常に速いスピードで作成されています。

これに対して、特に、「障害児の保護者の学校のつきそい強制をなくそう全国キャンペーン」の実行委員が精力的に傍聴に行っています。そして実行委員会で情報を共有し内容を検討し、保護者の付き添いは差別であること、望まない就学先の強制は差別であることをガイドラインに盛り込むよう、委員に働きかけを行っています。

また、DPI日本会議では差別解消法プロジェクトチーム(サべカイPT)を立ち上げて、「対応要領・対応指針に対する意見書」を作成しています。実際の差別事例を提示し、障害当事者の視点からガイドライン(対応要領・対応指針)に反映されるべき内容を以下の項目に分けて整理したものです。いわば、NGO版ガイドラインといえるものです。

1「正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに当たるもの」

2「合理的配慮の提供:積極的に提供すべきもの」

3「合理的配慮の提供:提供することが望ましいもの」

この意見書を各省庁に提出し働きかけをしていきます。もちろん文部科学省へも働きかけをします。

ところで、ここで問題が浮上します。教育委員会職員や公立学校教職員を対象としたガイドラインを作成するのは、文部科学省ではなく、地方公共団体又は都道府県・市町村教育委員会になります 。ところが、地方自治体の作成は努力義務となっています。つまり、作成されない恐れがあるのです。そこで、皆様がお住まいの地方公共団体や教育委員会に、対応要領の作成要請と、その内容に関する働きかけが必要になります。

そこで、学校教育における差別をなくすために、皆様に次の取り組みをお願いします。

① 8月に実施されるパブコメに意見を出す。

② お住まいの地方公共団体や都道府県・市町村教育委員会に、差別解消法対応要領の作成を要請する。

③ サべカイPTで作成中の意見書の内容を、対応要領に取り入れるよう働きかけをする。

意見書の請求については私までご連絡ください(reiko-giappone@nifty.com)。差別解消法が真に差別を撤廃する効力を持つよう、皆様の力を結集しましょう。

 【参考】
【問13‐5 公立学校の職員に対する対応要領は、どこが作るのか。各学校ごとに作成する必要があるのか。】

「(答)1.本法律案では、対応要領の作成に係る努力義務は、「地方公共団体の機関」に課せられていることから、原則としては、地方公共団体の判断により、地方公共団体全体(長)として又はその執行機関(教育委員会)ごとに作成することとなる。

2.また、当該地方公共団体において、教育委員会ごとに作成することとなった場合には、各教育委員会は、当該地方公共団体に身分が属する職員に係る要領を作成すると考えられ、都道府県教育委員会にあっては都道府県立学校に属する職員、市町村教育委員会にあっては市町村立学校に属する職員に係る要領を作成することとなる。」http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_ref2.html (2015/5/26閲覧)

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2015年7月336号目次

巻頭 差別解消法! 今が最後の頑張りどきです!!/第17回全国交流集会・分科会発題要旨/第2分科会「地域の子どもと一緒に学ぶ」/第3分科会「地域の学びを高校へ」/第4分科会「地域で生きる」/第5分科会「障害者差別解消法をどう使うか」/普通学校もあかんねん その9/「多様な教育機会保障法案」の根本問題 /日本の教育は何処に向かうのか/●相談からコーナー『校外学習、目的地から学校に戻るまでの保護者の付き添い』/事務局から/事務局カレンダー