障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2012年6月 305号巻頭文

『「障害児」の高校進学を実現する全国交流集会』へのご参加を!

全国交流集会実行委員会 竹迫和子(埼玉)

 一九九四年に東京で初めて開かれた『「障害児」の高校進学を実現する全国交流集会』は、その後隔年で、全国各地で開催されてきました。そして第十回集会を埼玉(国立女性教育会館)において開催することについて、いろいろな機会にお知らせし、参加をよびかけてきたところですが、いよいよこの秋十月六・七日に迫ってきました。現在、関係団体からの委員で組織する実行委員会やその事務局を中心に準備を進めているところです。

 前回の新潟集会の折に、次回は埼玉で開催しないかという声がかかり、とても全国の皆さんをお呼びできるような状況ではないと悩みましたが、〝たいへんな時こそ〟という言葉に押されて、日頃から一緒に取り組んでいる県内の団体とも相談し埼玉開催を決心しました。たいへんでも全国集会に向けて取り組むことによって前向きに行動を起こしていきたい、何よりも、今そしてこれから高校に入りたいという親子の希望を実現する力をつけていきたいという思いからでした。小中学校はもちろん高校でも一緒に学ぶことは、「地域で共に生きる」ことにつながるものであるし、「選抜とは何か」といった教育の根幹に関わる重要な意味も含んでいます。これからもこの運動は進められていくべきであるし、運動が始まってから四分の一世紀を経た今、あらためて高校入学の意味を捉えなおしてみたいという考えもありました。

 障害のある生徒の高校入学を巡る全国各地の状況は、定員内であっても入学を拒んでなかなか入れないところから、一緒に学ぶことの意義を高校教育においても認めて定員オーバーしていても入学が実現しているところまでさまざまです。統廃合などにより高校の門が狭められる一方、障害のある生徒は特別支援教育へという動きが強まり、とりわけ高等部だけの特別支援学校での就労教育を求めたり、また、私立のサポート校の受け入れが進んできて、敢えて高校に挑戦しなくてもという雰囲気が生まれたりなど、高校入学の運動が停滞しつつあるのも実際のところです。一見、中学校卒業後の受け入れ先が広がり親子がそれぞれ行ける所を選んでいるようでも、結局は本来の希望に沿っているわけではなく、障害の程度などに応じて細分化が進んでいます。経済不況で家計も逼迫し、運動に関われない、浪人生活は避けたいなど、運動を巡る状況も変化してきています。また、障害当事者の運動も活動家が高齢化して活動が狭められたり、制度ができて一定の生活が保障されることで権利意識が変わったり、契約関係で時間に縛られて県や高校との交渉に参加しにくくなったり、受験者の後押しがむずかしい状況も生まれています。学校に限らず障害者全体の生活全般に個別化が進んでいると言えます。

 このような分けられた状況の中で、高校に入りたいという希望や卒業後の生活もさまざまになっています。異なった立場から意見を出し合い、高校で学ぶことの意味を捉え返してみたいと分科会の内容を検討しているところです。

【第一分科会】「高校ってなんだ?」

 高校に入るについての分科会では、敢えてこのようなテーマで、地域の学校にこだわり小中高で学んでいる立場からと、学校にこだわらずに地域での自立生活をめざしてきた立場からの報告を受けて、高校で学ぶことの意味を考えていけたらと思います。

【第二分科会】「高校生活を楽しもう」

 高校生活については〝楽しい〟という感想をよく耳にします。ただ、進級・卒業、友だちや先生との関わりなど悩みもあります。それらを含めての〝楽しもう〟です。例えば介助者の配置など配慮を求める・求めないの違いから、合理的配慮について、また高校生活がどのように地域生活につながっていくかなど考えていけたらと思います。

【第三分科会】「高校からつながる社会」

 「共に学ぶ」から「共に働く」に必ずしもつながらない現実があります。また、地域生活、家庭生活をどう送るかということもあります。特別支援学校高等部を卒業したが地域にこだわり自立生活センターで活動し自立生活している報告や、高校を卒業して福祉農園での作業を中心とした事業所に通う兄との関わりについて弟の立場からの報告などを受けて、卒業後の生活について多面的に考えてみたいと思います。

【第四分科会】「制度と改革―やっぱり高校へ」

 全体会での講演『法改正の動きの中「障害児」の高校進学は?』や、全国の都道府県教育委員会に対する定員内不合格等に関するアンケート結果の報告を受けて、また全国各地の状況も合わせながら、今後の運動の方向を探っていければと思います。埼玉からは、選抜制度や支援体制が少しずつ受け入れの方向へ変わりつつも、障害の重い受験者に対してはあくまでもハードルを取り払わず排除している状況や、進級において必要な手立てをしないままできた学校に対し話し合いを重ね卒業をかち取った事例など報告します。どのような障害があっても入れるよう制度を作っていく中で、振り分けの枠ができていく現実があったり、制度がない中でも人との関わりを求めながら入っていく中で制度ができていったり、さまざまな闘い方を付き合せながら制度について考えていけたらと思います。

 各分科会において、論争が起こることを期待しています。
 分科会に先立ち、全体会では、『法改正の動きの中「障害児」の高校進学は?』という内容でインクルネット事務局の方に講演をお願いしているところです。昨年度の障害当事者の意向を踏まえた制度改革推進会議の提案が形骸化されつつあり、制度の改善もなかなか期待通りにはいかない状況ですが、その動きも見据えながら、議論していきたいものです。

 また、集会終了後のオプションの丸木美術館見学もぜひこの機会に。
 全国の多数の皆様のご参加をお待ちしております。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2012年6月305号目次
就学先決定の仕組みを改正し共生共育へ!
学校教育法施行令改正に関する要請書
普通学級の中へ、そしてこれから
 まずは一緒に学び生活するということが大事  娘と共に
全国連・初の連載小説! ただやみくもな、わけではない
各地の活動から 富山あっぷっぷの会
「家庭教育支援条例」は不滅です
「共に生きる石巻を作り出す連続公開講座」を行います
相談からコーナー  あらためてプール問題を考えよう
事務局から