障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2012年1月 301号巻頭文
しぶといヘンテコ軍団、新たにエンジンをかける!
広島県・世話人 穏土ちとせ
バクバクの会とは、考えてみれば、ずいぶんヘンテコな会だ。
〝親の会〟を名乗っているくせに、「親が子どもの最大の理解者であるとは限らない」なんて言っている。どうも後ろでバクバクっ子たちが、親たちを見張っているらしい。
「子どもの命と思いを大切に!」なんて看板も、実は、子どもたちから、しぶとくツッコミを入れられ続けて、やっとこさ手に入れることができた羅針盤だったりする。それでも、この私みたいに、頭じゃ分かっちゃいても、何かにつけて、ついオタメゴカシの御託を並べてしまう懲りない大人が世の中にウヨウヨいるもんだから、現役・天国支部含め、バクバクっ子たちは、いつもツッコミに忙しい。
私とバクバクとの出会いは、病院の洗面所のゴミ置き場だった。バクバクができて4年、幸実が1歳の頃だろうか。付き添いの合間に拾ってきた女性週刊誌の「がんばれ! 小さな戦士たち」とかいう連載に、間を置かずして、2人のバクバクっ子が紹介されていたのだ。
生後3ヶ月で人工呼吸器をつけた幸実の病名が確定したとき、予後不良で呼吸器を付けていても余命3年、それも病院の天井を見て過ごすしかないと宣告され、私は「これは間違いなく悲劇だ」と思い込んだ。当の本人にしてみれば、呼吸器をつけた途端、ホウレン草を頬張ったポパイの如く、♪タラララッタラ~と元気を取り戻したのに、勝手に不幸な赤ん坊だと決めつけられたのだから迷惑な話だ。そうは言っても、こんな親にでも、数か月もすれば、呼吸器も挿管チューブも栄養チューブも日常の風景に見えてくる。ホントにこの子に未来はないのかと訝り始めたところで出会ったのが、くだんの雑誌のバクバクっ子たちだった。
さっそく取り寄せた会報のバックナンバーが伝える子どもたちの姿と生活の広がりは、目からウロコ。目の前に希望が広がり、蘇生器具でしかなかったアンビューバッグがさっそくお散歩のお供に変身した。やがて、バクバク精神に則った毎日の小さな挑戦の積み重ねは、発想の転換と創意工夫で子どもの毎日は豊かになるということを証明してくれた。深刻な顔で病名を宣告した主治医も「医者の教科書の中身なんて3年位古いもんねぇ」と笑い、診断書に綴られる言葉も「生命予後不良」から「呼吸器をつけてれば元気」風に変わっていった。
その後の道のりは山あり谷ありだったけれど、「なるほど、呼吸器をつけていたって、どんな障害があったって、一人の子どもじゃん!」と共感してくれる人たちの輪が広がっていき、在宅移行のときも、保育園や小学校へ入るときも、ともに試行錯誤してきた主治医や看護師さんたちはもちろん、いつもたくさんの人たちが、幸実の強力な応援団となってくれた。
バクバクが全国組織になって20年。人工呼吸器をつけたからこそ未来が広がり、生き抜く子どもたちの姿に動かされた人たちが繋がれば新たな障壁を乗り越えていくことができる。この実感を原動力に、私たちは、バクバクっ子たちとともに、誰もが当たり前に暮らしていけるような社会の実現を目指して活動してきた。だが、今、社会の現実は、かわいそうな命も無駄な命もないのだと、20年前に立ち戻って叫び続けなければ子どもたちの命と思いを守ることができない方向に転がり始めている。20周年総会で「バクバクっ子・いのちの宣言」が採択されたのも、決して〝記念碑〟的意味なんかではないのだ。
幸い、私たちの後ろには、あきらめずにツッコミを入れてくれるバクバクっ子たちがいてくれる。かつてゴミ置き場での出会いがきっかけで、こんな私でも価値観がひっくり返されたように、ハッと気がついてくれる人たちが、まだまだたくさんいるはずだ。もう一度、命の値打ちに順番などないことをバクバクっ子たちとともに社会に向けてていねいに伝え、誰もが当たり前に暮らせる社会を目指す仲間をひとりでも多く増やしていこう!(バクバクの会20周年記念誌への寄稿文)
(人工呼吸器をつけた子の親の会〈バクバクの会〉副会長)
全国連絡会のみなさま
「くやしい、せつない、でも絶対あきらめない」
今年もこのモットーで、バクバクの会はしぶとく活動していきます。
ひとりももれなく、共にたたかっていきましょう
「バクバクっ子・いのちの宣言」文
〈ひとつ〉
わたしたちは、みんな、つながっているにんげんです。
いっしょうけんめいにいきています。
〈ふたつ〉
いま、せかいは、いのちのじだいです。
わたしたちには、そのいのちを、ひとりのにんげんとして、
たいせつにすることが、もとめられています。
〈みっつ〉
どのいのちも、ころしても、ころされても、じぶんでしんでもいけません。
とおといしにかたは、ありません。
とおといいきかたと、とおといいのちがあるだけです。
〈よっつ〉
わたしのかわりも、あなたのかわりもありません。
わたしたち、にんげんは、わたしのいのちを、せいいっぱい、いききるだけです。
〈いつつ〉
わたしたちは、わたしたちのいのちをうばうことをゆるしません。
わたしたちは、わたしたちをぬきに、わたしたちのことをきめないでとさけび、ゆうきとゆめ、きぼうをともだちに、にんげんのいのちのみらいにむかいます。
バクバクっ子 一同
2010年7月31日 第20回バクバクの会総会・特別決議として承認。
翌8月1日 バクバクの会20周年記念集会にてバクバクっ子代表が宣言。
バクバクの会ホームページ http://www.bakubaku.org/
他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。
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全国連絡会への年賀状から |
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戦いは誰のために その9 - 公立学校、普通学級に通う |
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