障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2011年10月 299号巻頭文

就学ホットラインの報告 全国16カ所で一斉に実施

埼玉県・運営委員  山本勝美

去る9月21・22の両日を中心に、全国連恒例の就学相談ホットラインが行われました。この時期に実行したのは就学時健康診断(就健)が全国で11月に行われるからです。就健を前にしていろんな悩みをかかえておられる方々に少しでもお力添えできればと願ってのことです。

今回は全国の16都府県で一斉に電話相談を行ったという大きな意義があります。マスメディアによる予告も、新聞記事の数はともかく毎日新聞などは各地方版で記事が掲載されました。またあとで触れますが埼玉、千葉、山梨、愛知の仲間はその地域の新聞にも働きかけたことが、ホットラインの本数にも反映されています。

相談件数は飛躍的に増えた

ホットライン終了後、全国連の事務所から16カ所の担当の方々に結果を問い合わせました。すると各地での相談内容について相談記録やその会の会報などの形でご報告がありましたので全体を集約してみます。
相談総数は23件でした。従来は全国連の事務局だけで行うことが多かったので一桁程度の電話本数でした。ですから今回は飛躍的な(?)結果になったと言えます。この23件について分析してみましょう。内容を分類すると来年就学予定児の保護者が9件、在学児の保護者が10件でほぼ同数でした。ほかに就学前の年少組,年中組など未就学児が4件でした。

専門家の指導が自信を失わせる

就学予定児のご家族からの相談は、普通でやっていけるか? 支援学級か? 支援学校か?という迷いの中からの声。普通に行くことを迷う、あるいは自信がもてない気持ちにさせるものとしては、「本人に合った教育が良い」と医者にすすめられた、言語療法士に普通学級を全否定された、「特別支援学級のほうがゆったりしていいのでは?」という教頭など、専門家のマイナス思考の指示で自信をなくす例が多く見られます。

このほか、手足に障害があるので移動の際が心配、保育園で加配職員のついた障害児保育枠で過ごしてきたので、といった介助の有無の心配、周りの子どもに迷惑をかけるのではと心配、などが見られます。ほかの子に迷惑、という心配に対してはこちらの相談員から「どの子も迷惑をかけ合いながら育っていくものだから」という強力なアドバイスがなされています。

埼玉の会報に学校側の指導に対する鋭い感想が記されていますので引用します。
「今回の相談で感じたのは、最近は親子が選んで特別支援学級・学校に行っていると思っていたのですが、やはり強い指導があることがわかりました。例えば選ばせるような言い方であったとしても、ふだん自分の子どものようすを見ながら不安に思っている親はますます不安になり、少しでもできるようにとかまわりに迷惑をかけないようにとか(略)迷ってしまいます」(「どの子も地域の公立高校へ・埼玉連絡会」)

「支援学級から普通へ」という在学児の相談

23件の電話総数のうち在学児が10件、未就学児が3件ありました。これらの数字は意外でした。「就学ホットライン」と銘打って実施しているのですが、すでに普通学級に入学してがんばっている方々にも相談できる機会になったわけです。また就学する2年も3年も前からいろんな不安を抱えている方々がおられ、そうした方にもお役に立っていることも分かりました。今後のホットラインの取り組みを在学児や未就学児の相談にも生かしていく必要があります。

では在学児、未就学児についての相談内容を紹介しましょう。

ほかのケースも合わせると、支援学級の子でしかも普通へ移りたいという相談が多いです。高校進学の際普通へとの希望もあります。あと支援学校を勧められているが嫌などの相談です。このように在学児の相談となるといろんな立場と進路の相談が寄せられてきています。以上を要約すると、普通学級へ向かおうとする取り組みは、就学段階でチャレンジしたあと普通にとどまろうとする局面が続きますが、その他に支援学級からチャレンジする例が多いことがわかりました。
 あと未就学児の相談では障害のある子はどうすれば普通に入れるかという相談が主でした。

来年のホットラインのために

件数の多い所を列挙すると、埼玉6件、愛知6件、山梨4件、千葉3件、大阪2件などとなっています。首都圏、大都市圏に多く、地域による差異が見られます。各地域の就学児をめぐる関心度や運動の経過のちがいなどもあってのことなのでしょう。そういう点からすると東京(1件!)はもっと努力工夫する余地がありそうです。

最後に、ホットラインがその役割を発揮できるかどうかは、
(1)相談を受ける電話がどれだけの地方に広く設置されるか
(2)ホットライン開設の情報がメディアなどを通してどれだけ広く当事者に届けられるか
にかかっています。

今回、埼玉、千葉、山梨、愛知では全国紙の地方版のほか地方紙に事前に働きかけを行ったとのことです。埼玉の場合ホットライン実施の記者会見をし、「高校進学を実現する全国交流集会」・プレ集会をホットラインの直前(9月19日)に開催し70名の参加があり、ホットラインの宣伝も行ったとのことです。やはり準備にそれだけの力を注いだことが功を奏したのでしょう。

なお各地方のメディアは都道府県庁や地方議会にある記者クラブ(記者会)に集合しています。そこの幹事団体(新聞社)に事前にアポをとっておき、資料やビラを事前配布しておくと当日その記者会の部屋に集まって下さいます。

他方で近年、若い世代の新聞・活字離れは著しく、新聞自体を取っていない世帯が激増しています。インターネットを通して育児、教育、医療、買い物などすべての必要な情報を収集しています。それも自分のパソコンだけでなくネットカフェ、携帯で情報を得ています。インターネットを駆使することが必須の時代です。全国連をはじめ各地の団体でもホームページを活用しましょう。

今回参加された各地方のみなさんには大変ご苦労様でした。来年もよろしく。また今回は参加されなかった地域のみなさんも、来年はぜひこの共同行動へご参加を!。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報
2011年10月299号目次
就学ホットラインの報告全国16カ所で一斉に実施
第二十八回共同連東京大会を終えて
全国連発足30周年企画リレートークNo5 闘いの日々を振り返る
第15回全国交流集会・分科会発題要旨―【第3分科会/第4分科会/第5分科会】
校長先生への要望書 普通学級で共に
原発・放射能と障害児について
新たなお尋ねです
戦いは誰のために その8 公立学校、普通学級に通う
路上生活者の方の約7割は知的障害?
雑居まつり報告
事務局から
インクル共ともちゃんパンフ
11月9日第4回院内集会案内